「飛びぬけて優れた記録」佐野眞一氏の書評!

週刊現代4月21日号に書評が掲載されました。評者はノンフィクション作家の佐野眞一氏!

ノンフィクションの大家である佐野先生に「私のこの間の仕事と陰に陽に響きあっているように思った」1冊としてご紹介いただきました。私達プロジェクトの意図をずばり見抜いて「私が知る限り飛びぬけて優れた記録」「私の持論を実践しているよう」と高く評価くださいました。
佐野先生、週刊現代様、どうもありがとうございました。

その一部をご紹介します。

『3.11慟哭の記録』は、数多く刊行された「三.一一」一周年記念出版物の中で、私が知る限り飛びぬけて優れた記録となっている。五百ページを超す大部の本だが、あっという間に読破できるのは、この未曾有の体験がもっともらしい“大文字”言葉ではなく、すべて“小文字”言葉で書かれているからである。それが比類のない切実感となって読者を圧倒する。

…中でも、両親とはぐれ自分の無事を知らせるため、家の「玄関の下の泥に棒で『かな無実です』(無事と書きたかった)とメモして書いた」と記した阿部果菜という女子高生の記録は、悲しみの中に笑いをにじませて出色である。

 この本を読んでわかるのは、私たちが「三.一一」をいかに知らなかったかである。…私たちが衝撃的な映像でこの災害を知ることになったとき、大津波に巻き込まれた当の被災者はその映像と最も遠い地点にいたことを忘れている。…本書は、そのことを痛切に教えてくれる。
 
「三.一一」の講演会で一番多く寄せられるのは、「私たちは『三.一一』の被害に遭われた皆さんに何をすればいいんでしょうか」という質問である。それに対して私は「ひとりひとりの「三.一一」体験を思い出すことです。そして、一年後の自分は、十年後の自分はそのときからどう変わったかを反芻することだと思います」と答えることにしている。…本書は、私のそんな持論をいち早く実践しているようにも見える。